Jazz 日記 in 【切羽詰まってバンドマン!】どうすれば、ジャズ・ミュージシャンになれるか? 







■■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■■


   【切羽詰まってバンドマン!】

      ‐‐‐‐号外‐‐‐‐   


どうすれば、ジャズ・ミュージシャンになれるか?                   

■■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■■



僕がプロの舞台を踏んだのが17歳の6月の中頃。



晴れの初舞台となったのは、淡路島、洲本のキャバレー。



さすが漁師町だけあって客のほとんどがダボシャツに腹巻き、ステテコ姿のよく似合うおじさん。



勿論、ねじり鉢巻は欠かせない。



見た目も遊び方も豪快そのもの。



ビール片手にホステス相手に大声で笑いながら大人の会話を楽しむのが主流。


ホステスだって負けていない。


薄手のドレスで嬌声を上げながら、やはり大人の会話に興じている。


初ステージだから緊張するかと思いきや...


バンドのメンバーがステージに上がろうが演奏を始めようが、客席の喧騒は一向に収まらない。


つまり誰一人として演奏など聴いていないのだ。


17歳の少年が晴れの初舞台に緊張しようが、緊張のあまり顔を紅潮させようが知ったこっちゃない。


あまりの騒々しさに客席を見渡すと...


(ホンマに聴いてないんや...それにしても、やかましいな)


そうと解ると阿呆らしいやら、呆れるやらで、緊張どころか逆に気持ちが軽くなった。


本当は押しつぶされそうな緊張感の中で膝の震えを感じつつジャズの醍醐味を味わう...そんな一生の思い出になる強烈な初舞台を想像していたし、またそうであって欲しいとも思っていたのだが。


(なんや知らんけど、ガッカリやがな...)


夢と現実との間には、常に恐ろしいほど距離があるようだ。


ナット・ヘントフが書いた「ジャズ・カントリー」に出てくる少年トランペッターみたいな話なんて、なかなか現実には起こり得ないものなんだろう。

***********************************************************************************************



洲本のキャバレー「メトロ」で、掃除夫・ボーイ・バンドマンの3つの仕事をしながら俺のプロ生活が始まった。


昼の1時には店に入り、モップをバケツの水で洗いながら店内、トイレ、厨房などありとあらゆる所を綺麗に拭き込んで行く。


3時頃に配達されるビール20本入りのケースを何個か受け取り、カラ瓶の入ったケースを業者に渡す。


ケースから出したビールを冷蔵庫に入れていく。


前日の食器やコップなどが汚れたままになっていたら洗って棚に仕舞い込む。


そこまでが掃除夫の仕事である。


4時半ころに全てを終え、やっと自分の時間となる。


やることは一つ。


直ぐにサックス出してトレーニング開始。


5時半にはマネージャーが店にやって来る。


最初は色々と話し掛けてきていたが、話し相手である俺が不機嫌になるのを知ってからはホステスたちが出勤してくる6時までは自由に練習させてくれるようになった。

***********************************************************************************************



6時半になると、俺は上下黒服に着替えて蝶ネクタイを結ぶ。


要するに、そこからがボーイの時間に切り替わるワケだ。


7時には店内の厨房の前に立って客待ちとなる。


店側としては大入り満員を期待しているのだが、俺としては客など一人も来ないことを願う。


しかし、俺の願いなど叶うはずもなく、7時前からねじり鉢巻がステテコ姿で現れる。



(なんで来るねん...暇なんか?)



7時から始まる1ステージ目の演奏を聴きながらビールとおつまみをお盆に乗せて客席を廻る。


8時前に階段を駆け上がり、ジャケットに着替え、蝶ネクタイから棒ネクタイに結び変える。


そして、渡される譜面を見ながらショーの打ち合わせの中に入り説明を聞く。


ショータイムに出演するのは演歌歌手かヌードダンサーのどちらかで、大阪、神戸などのキャバレーに出演するアクロバットなどの曲芸やマリオネット人形、手品に漫才などの上品な出し物は「メトロ」には来なかった。


以前は来たのかも知れないが、客受けが悪いので呼ばなくなったらしい。


俺は「Bbメロ」或いは「Cメロ」の譜面を貰い、最初から最後までのメロディ全部を演奏する。


取り敢えず、ざっと譜面を見渡して譜面に問題が無いかだけ確かめる。


(大丈夫やな)


譜面に問題さえ無ければ、俺には何の問題も無い。


途中でシャープが100個になろうが、最初からフラットが200個付いてようが、32分音符が連続で500回出てこようが、64分音符と128分音符が交互に出てこようが、初見で間違えること無く最後まで完璧に演奏できる。


その自信は揺るぎないもので、一年間に600曲は演奏しなければ成らない「阪急少年音楽隊」に在籍していた者なら5拍子が7拍子に変わった後に15拍子と30拍子が互い違いに出てきても絶対にミスなどしない。


いや、出来ない。


それが「阪急少年音楽隊」というものなのだ!


バンドのメンバーたちはショータイムになると俺に頼り切る。


その雰囲気が俺にはすこぶる心地よかった。


ショータイムは2回。


それが終わると、またボーイに変身してフロアを駆け巡り、ビールやおつまみをテーブルに運んだり、片付けたり。


それが11時まで休みなく続く。


帰るのをグズっている客の尻を蹴飛ばして店から追い出すと、俺の一日の仕事が終了する。


後片付けを終えると、12時半。


ボーイ宿舎として充てがわれているマンションに帰り、飯を食って寝るのが2時ころ。



そんな生活が始まって三週間が過ぎた頃...




俺に転機が訪れた。






********************************************************








■■■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■■■
# by funky-ts-kr | 2017-09-03 16:58 | 切羽詰まってバンドマン! | Trackback | Comments(0)